なぜ、日本企業はIFRSを適用しないのか?

私が、上場企業の担当者と話をする限りにおいてですが、多くの日本企業がIFRS適用をためらう理由は、海外子会社の決算を迅速に行うことができないからだと考えています。

例えば、3月決算の会社の場合、日本基準(連結財務諸表に関する会計基準 / 企業会計基準第 22 号)においては、

子会社の決算日と連結決算日の差異が 3 か月を超えない場合には、子会社の正規の決算を基礎として連結決算を行うことができる(連結財務諸表に関する会計基準16項・注4)。

というルールがあるため、12月決算の会社をそのまま調整せずにとりこむことが可能です。

しかし、IFRSでは、原則として、同一日付で、子会社の決算を連結する必要があります(IAS27号第22項)。12月決算の海外子会社も3月末日付で仮決算を行わなければなりません。これは、連結決算を行う本社側にとっても、決算を締める子会社にとっても、相当な負担になってしまうため、IFRSの適用を躊躇している会社が多いのではないかと考えています。

とはいえ、12月決算の子会社の12か月分の数字を、3月の決算時に3か月遅れでそのまま取り込むというのは、実務的には楽ちんである反面、実際に数字を見る財務諸表利用者に対して、非合理的な決算数値を開示していることだけは、間違いないと思います。あまり、望ましいことではないでしょう。

いずれにしても、日本企業がIFRS導入にあたっては、海外子会社の決算をいかにスピーディーに進めるのかというのが、最大の論点になると考えています。では、海外子会社の決算を早期化するには、どうすればよいのか?いくつか対応策は考えられますが、①親会社監査人・現地の子会社を担当する監査人などと、どこまで簡略的・効率的な会計処理の手続が認められるのか交渉する、②交渉後、現地の経理担当者とコミュニケーションをとり、画一的な処理が行われるよう指導・監督するということが必要です。しかし、こういったことが英語できちんと対応できる人材が会社にいるのかというとそうとも限りません。海外子会社の決算を効率的に進めるということは、一筋縄ではいかない作業です。

こういったことに悩みを抱えているのであれば、私はいっそのこと、その作業だけを外部の公認会計士などに丸投げしてしまえばよいと思っています。ただし、海外の駐在経験のある会計士がベストでしょう。海外の子会社決算指導といったような作業は、一年中対応が必要な仕事でもありませんし、月でいえば数日単位の対応でも十分な場合もあります。これからの時代、こういった仕事をアウトソーシングして、必要に応じて外部の専門家に対応してもらうというような対応も、財務経理部には求められることになるでしょう。

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