非上場企業の会計監査(ケースその2~会社法監査②)

(前回記事)
非上場企業の会計監査(ケースその1~会社法監査①)

会社法では、資本金5億円以上の大会社に会計監査人の設置が義務付けられていますが(会社法328条)、たまによく目にするケースが、大会社になるつもりはないんだけど、大会社になってしまって、監査を受けることになってしまったケースです。

具体的に、2018年12月に増資をして、資本金5億円以上となった2019年3月決算の会社を例に考えましょう。

①2019年12月31日:
増資して、資本金が5億円の会社になる。決算日(2019年3月末)まで減資もしていない。

②2019年3月31日:
2019年3月31日の貸借対照表において、資本金が5億円以上もしくは負債総額が200億円を上回ることが確定。減資をしていれば、大会社にはならなかったが、減資をしていないと大会社になる。

(参考)会社法2条6号(一部省略)

次に掲げる要件のいずれかに該当する株式会社を大会社という。
・最終事業年度に係る貸借対照表(第439条前段に規定する場合にあっては、同条の規定により定時株主総会に報告された貸借対照表をいう)に資本金として計上した額が5億円以上であること。

③2018年3月期において、会計監査人を選任していなかった場合には、2019年6月に開催される株主総会の招集通知において、会計監査人の選任議案を提出

要するに、2019年3月までに減資しておけば、大会社にはならず、会計監査人も選任する必要はなかったのですが、それを失念してしまったために、会計監査を受けることになってしまったケースです。

この手の会社さんからは、「何とか監査を受けなくても済む方法ってないですか?」という質問を受けることがあるのですが、会計監査人の非選任は、コンプライアンス違反に即直結するような話であり、昨今の法令順守を強く求める社会的風潮を考えると、ガバナンスの観点からも望ましい状態ではないですよね。20世紀であれば、監査をしないという選択肢をとっても何も言われなかったかもしれませんが、ちょっとしたことでも後ろ指をさされる可能性がある21世紀、もはや専門家としては、「選任しなくても大丈夫」などとは言えません。選任しなかったとしても、過料は100万円以下なのですが(会社法976条22号)、今の時代、SNSなどでどんな責めを負うことになるのかわからない時代です。選任しなかったことによる社会的信用の喪失をはかりかねない以上、選任しないということはあり得ないのではないでしょうか。

ただ、ワンタイムの会計監査ということであるならば、大手の監査法人に依頼する必要は必ずしもないとは思います。規模が大きな会社であれ、非上場企業であれば、個人の会計士でも対応できる範囲の業務であると思われます。アクシデンタルなかたちで、会計監査を受けることになった場合でも、費用などをリーズナブルな水準におさえるため、個人の公認会計士に業務の依頼を考えることも選択肢のひとつだと思います。


(リンク)

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