RPA化と会計業界

以前、働いていた上場会社では、経理業務のRPA化を目の当たりにしてきましたが、いわゆる中小企業でもそんな流れは加速することになるでしょう。もはや、領収書をスマホのカメラ機能で読み込んで、そこから仕訳入力まで飛ばすことができるようになっています。記帳代行というサービスは、どんどん無くなっていくでしょう。ただ、仕訳入力まで飛ばすことができるようになるとはいっても、正しい仕訳が入力されるかどうかは、また別問題ではあり、それをチェックする仕事というのは必要でしょう。また、経理のRPA化を進めるといっても、事業を行う会社側でも準備が必要です。可能な限り、手許現金を使わないようにして、クレジットカードや銀行振込などの取引に集約しない限りは、決算も楽になりません。こういった会社の記帳代行など受けたがる会計事務所は、RPA化に対応できないところだけになるのではないでしょうか。

シンガポールでは、税法も非常にシンプルであったので、税務申告もかなりIT化が進んでいました。何しろ、e-tax以外の申告は既に受け付けていません。日本もいずれそうなりますが、税法だけはやたらと複雑なので、税理士としての仕事は残るのかもしれません。ただ、規模が小さい中小企業の税務申告は、これからも手続はどんどん楽になっていくはずです。仕訳入力から、自動的に申告書を作成するまでの流れをオートメーションで進めることは可能でしょう。

監査業界も確実にIT化は進んでいます。もはや、監査調書を紙で作成する時代は過去のものとなりましたし、定款や契約書を監査法人に提供するときもできる限りPDFで渡すようになっています。最近、大手監査法人が仕事をしている部屋に入ったのですが、あまりにも紙の資料が少なくて驚きました。仕訳データを全てチェックするというのも、IT技術を使えば可能になっているので、試査という概念が売上・仕入といったトランザクションにおいて、なくなってくるかもしれません。いずれにしても、こういった監査手続は省力化されてくるので、工数もぐっと減れば会計士もそれほど大人数は必要なくなるかもしれません。

監査・会計・税務のIT化、RPA化はここ5年の流れですが、おそらく10年後は全く違う光景が見られるでしょう。日商簿記の勉強というのは、財務会計の業務にたずさわる上では必要だと思いますが、もはや日商簿記1級を持っているくらいでは、何のアドバンテージも得られない時代がやってくるでしょう。公認会計士にしても、通常の会計や監査の知識に、プラスアルファの能力、具体的にはITや語学、資金調達、IR、マネジメントの知識・経験がないと、相手にされなくなるでしょう。いずれにしても、どんな業界でも、最先端の技術を身につけていって、新しい潮流に乗っていかないと生きていけません。