租税回避地子会社の所得 (京セラの事例)

京セラ14億円申告漏れ 租税回避地子会社の所得(日経新聞)

タックスヘイブン(租税回避地)にある子会社の所得を巡り、電子部品大手の京セラ(京都市)が大阪国税局の税務調査を受け、約14億円の申告漏れを指摘されたことが21日、関係者への取材で分かった。過少申告加算税などを含む追徴税額は3億円弱とみられる。京セラによると、2017~18年度について指摘された。既に修正申告し、納付も済ませた。

関係者によると、京セラはシンガポールに電子部品製造業の子会社を所有しているが、国内の所得として合算していなかった。国税局は低税率の国や地域に利益を移すことによる節税を防ぐ「タックスヘイブン対策税制」に基づき、合算すべきだと判断した。

対策税制は海外で事業展開や工場運営の実態などがあれば適用が除外される。国税局はこの子会社を、シンガポール国内に工場などの施設を持たないペーパーカンパニーと認定し、除外されないと判断したもようだ。

ファーストインプレッションとしては、「これは、京セラ気の毒だなあ…」ということ。こういったニュースを一般人が見て、「これだから、大企業はけしからん!」などという雰囲気が醸成されないことを望みます。

京セラほどの会社になれば、シンガポールに子会社を作って、東南アジアでの事業展開を当然に考えますよ。しかも、Regional Head Officeとして。シンガポールに住めばわかりますが、もはやシンガポールに自由に工場など作ることができるような土地などほとんどありません。工場運営の実態というような形式的要件を満たすことなど、不可能ではないのでしょうか。にもかかわらず、当該シンガポール子会社がペーパーカンパニーとみなされてしまった。気の毒という以外ありません。

シンガポールの実効税率が17%で、日本が23.2%です。追徴税額が純粋に国税に関するものだけと仮定すると、3億円の申告漏れということは、このシンガポール法人だけで、記事にあるとおり、10億円以上の課税所得が派生しているとは思いますが、それだけの利益をあげている会社をペーパーカンパニーとみなすこと自体、少しおかしいんじゃないの?というのが個人的感想です。しかし、京セラともあろう会社が、タックスアドバイザリーに大手税理士法人をつけていないとも思えないので、おそらくこの争いを長引かせてもあまり意味がないという判断を、専門家とも話し合ったうえでしたのでしょうか。

しかし、こういう会社がペーパーカンパニーとみなされてしまうのであれば、ますますシンガポールにRegional Headを設置して、東南アジアでの事業展開を考えるという会社が少なくなるような気がします。国税局はそういった影響までは考えることはないのでしょうか。