外国法人の会社機関設計(その1)

外国法人が日本で会社を設立するケースにおいては、駐在員事務所、支店、法人の3つのパターンがありますが、ほとんどの企業が法人、しかも株式会社を設立することが多いと思います。ここでは、株式会社の機関設計について解説していきます(なお、当該記事は、英語版ブログでの英訳を後日配信する予定です)。

株式会社にどのような機関を置くかを検討するに当たっては、その会社が、

・公開会社か非公開会社か(株式の譲渡制限を設けるかどうか)
・大会社か中小会社か(資本金が5億円以上かどうか)

によって変わってきます。ただ、企業の性質を考えると、非公開会社としての設立がほとんどであると思われます。ここでは、当該ケースに限定して話を進めたいと思います。

まず、非公開会社のうち、大会社以外の会社のケースについて話をすると、この場合、株主総会と取締役の設置は義務付けられますが、取締役会の設置は任意的です(会社法326条1項、2項)。取締役会が設置されない場合、株主総会、株主の権限が強化され、利益相反取引の承認などは株主総会の権限とされることになります。また、会社が取締役会を設置しない場合、監査役の設置も任意です(会社法326条2項)。なお、会社が取締役会を設置する場合においても、監査役の設置は必要的ではなくなりましたが、監査役を設置しない場合には、会計参与を置くことが必要です(会社法327条2項)。

以上を踏まえると、資本金5億円以下の非公開会社の場合

①取締役1名+監査役なし
②取締役1名+監査役あり
③取締役複数名(取締役会)+監査役あり
④取締役複数名(取締役会)+会計参与

という機関設計が考えられることになります。それでは、日本に進出する外資系企業にとって、どのような機関設計が理想的かということになると、まず取締役の構成によって左右されることになります。

たとえば、1名の取締役を置いて、その人に全権を委任するということであれば、①の形態がベストでしょう。監査役を置いてもよいですが、正直あまり有効に機能するとは言えないので、②の選択は無視してしまってもよいでしょう。

逆に、複数の取締役を選任して、会社の意思決定を行うということであれば、監査役もしくは会計参与を設置しなければなりません。とはいえ、監査役の選任に関しては、通常、常勤で勤務する役員を選任することが難しいでしょう。適切な人材がいれば問題ないですが、監査役を新たに探さなければいけないということであれば、外部の弁護士・公認会計士などに依頼するというのが無難な選択肢であると思われます。常勤の役員を選任する必要は、必ずしもありませんし、法律や税務・会計にも通じた人材の選任がベストでしょう。ちなみに、会計参与は、公認会計士・税理士しかなることができないこともあり、純粋な日本企業においても、あまり見られない機関設計です。ということを考えると、③を選択するのがベターでしょう。

(参考)
外国法人の会社機関設計(その2)
外国法人の会社機関設計(その4)~支店の設置

(リンク)
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