研究開発費の定義(IFRS/US-GAAP)

一般的に、研究開発費の定義については、日本基準/米国基準/IFRSの間で大きな差異はないと言われています(ただし、IFRSでは研究開発費が資産計上される余地が広いので注意)。定義については、実際にその通りだと思われますが、US-GAAPやIFRSを適用する際には、やはり異なる基準に基づいて判断をするため、慎重な検討が必要かと思われます。

ここでは、米国基準とIFRSの研究開発費の定義について説明します。

IFRS

「IAS38 無形資産」において、研究とは「新規の科学的又は技術的な知識及び理解を得る目的で実施される基礎的及び計画的調査」と定義されています。また、例として
– 新知識の入手を目的とする活動
– 研究成果又は他の知識の応用の調査、評価及び最終的選択
– 材料、装置、製品、工程、システム又はサービスに関する代替的手法の調査
– 新規の又は改良された材料、装置、製品、工程、システム又はサービスに関する有望な代替的手法等についての定式化、設計、評価及び最終的選択
のようなものがあげられています。

また、開発とは「商業ベースの生産又は使用の開始前における、新規の又は大幅に改良された材料、装置、製品、工程、システム又はサービスによる生産のための計画又は設計への、研究成果又は他の知識の応用」と定義されています。具体的には
– 生産又は使用する前の試作品及び模型に関する設計、建設及びテスト
– 新規の技術を含む、工具・治具・鋳型及び金型の設計
– 事業上、生産を行うには十分な採算性のない規模での実験工場の設計、建設及び操業
– 新規の又は改良された材料、増値、製品、工程、システム又はサービスに関し選択した代替手法等についての設計、建設及びテスト
のようなものがあげられます。

US-GAAP

US-GAAPでは、ASC730 Research and Development において定義が示されています(和訳省略:ASC 730.10.20)。

Research is planned search or critical investigation aimed at discovery of new knowledge with the hope that such knowledge will be useful in developing a new product or service (referred to as product) or a new process or technique (referred to as process) or in bringing about a significant improvement to an existing product or process.

Development is the translation of research findings or other knowledge into a plan or design for a new product or process or for a significant improvement to an existing product or process whether intended for sale or use. It includes the conceptual formulation, design, and testing of product alternatives, construction of prototypes, and operation of pilot plants.

なお、ASC730.10.55において、以下の項目が例示されています。
a) 新しい知識の発見を目的とした実験室における研究
b) 新しい研究結果やその他の知識の応用の研究
c) 実用化可能な代替的製品またはプロセスの概念的な形成や設計
d) 製品またはプロセスの代替案を調査するためのテストまたは評価するためのテスト
e) 製品またはプロセスの概念設計または設計の変更
f) 試作段階のプロトタイプと模型の設計、製作、およびテスト
g) 新技術を含む工具、治具、鋳型、金型の設計
h) 商業生産の実現可能なものではないパイロットプラントの設計、建設、および操業
i) 製品が一定の機能的および経済的要件を満たし、製造活動がスタートできるまでに必要とされるエンジニアリング活動
j) 研究開発を促進するために使用されるツールの設計と開発、または研究開発活動を行っている製品またはプロセスの要素

上記の内容を吟味すれば大きな差異はないという結果になるでしょうが、やはり専門的見地からの判断が必要になるのと、このような検証作業は思いのほか手がかかることが悩ましいのではないでしょうか。次回は、IFRSにおける研究開発費の資産範囲について説明したいと思います。

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