GAAP差異(棚卸資産)

日本基準、米国基準、IFRSとの間であまり差がないといわれる棚卸資産ですが、注意すべき点はあります。すべてのGAAP差異について言及するのは避けますが、比較的論点としてあげられている内容についてのみ記載しておきます。

1.棚卸資産の範囲

(日本基準)棚卸資産の評価に関する会計基準

日本基準の第3項において、「棚卸資産は、商品、製品、半製品、原材料、仕掛品等の資産であり、企業がその営業目的を達成するために所有し、かつ、売却を予定する資産のほか、売却を予定しない資産であっても、販売活動及び一般管理活動において短期間に消費される事務用消耗品等も含まれる。」と定義されています。

したがって、販促用に用いられるパンフレットだとか、コピー機の予備用トナーなんかも棚卸資産に含まれてしまうというルールです。税法を意識した規定になっているという印象です。なお、工場などで使用される予備品などは、これを見る限りは、棚卸資産には含まれないと解釈されます。

IFRSでは、以下のような資産を棚卸資産と定義しているため、事務用消耗品は含みません。(IAS2.6)

・通常の事業の過程において販売を目的として保有されるもの
・その販売を目的とする生産の過程にあるもの
・生産過程または役務の適用にあたって消費される原材料または貯蔵品

USGAAPもほぼ同義。

2.後入先出法

USGAAP ASC330.10.30.9 では

Cost for inventory purposes may be determined under any one of several assumptions as to the flow of cost factors, such as first-in first-out (FIFO), average, and last-in first-out (LIFO).

(意訳)棚卸資産の原価は、原価要素のフローにかかる仮定のもとで決定されるものであり、FIFOやLIFOなどがある。

とあります。なお、IFRSではLIFOは認められていません。日本基準は34-12項を参照していただきたいですが、IFRSを踏襲しています。

3.仕入割引

IAS2.11では、値引、割戻、その他類似のものは購入原価の算定上控除するとされていることから、仕入割引は控除するものと解されます。

USGAAP ASC705.20.25.1-4では、

The entity shall account for consideration from a vendor as a reduction of the purchase price of the goods or services acquired from the vendor unless the consideration from the vendor is one of the following(業者からの対価が以下のいずれかでない限り、取得した財またはサービスの購入価額の控除項目として会計処理するものとする。そして、例示内容に仕入割引は定義されていない):

とされているので、仕入割引は原則控除。日本基準は営業外収益です。簿記の勉強をされた人であれば、ご存知ですね。

4. その他

棚卸資産評価減の戻入や、標準原価適用に関する論点などがあります。GAAP差異が少ないとされている棚卸資産でも注意すべき点はありますので、IFRSやUSGAAPへのコンバージョンをしようとしている経理担当者の方は、専門家へのご相談をされるのが望ましいと思われます。

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