監査報酬の相場(ファンド監査)
弊社では、ファンド監査の依頼の問い合わせを受けることが多くあります。では、ファンドの監査費用の相場とはどれくらいになるのでしょうか。これについては、2021年12月10日に、公認会計士協会から、監査実施状況調査の報告が公表されており、この中に記載されている投資事業有限責任組合のデータが参考になると思われます。
2020年度において、監査を受けている投資事業有限責任組合は1133社。そのうち、10億円未満の組合は1024社になります。思ったより少ないと思われすが、これは任意組合や匿名組合のようなファンドは含まれていないためです。なお、投資事業有限責任組合の監査は法定監査であるため、こういった任意組合や匿名組合の監査よりも、監査費用は多くなる傾向があります。
投資収益10億円未満: 1024社 平均監査報酬 116万円
投資収益10億円以上: 109社 平均監査報酬 228万円
なお、この監査実施状況調査では全会社の監査時間総計も記載されているため、公認会計士(スタッフ会計士補も含んでいる)が作業した時間単価を求めることができるのですが、単純に上記の監査報酬を監査時間で割ってみると下記のようになります。
投資収益10億円未満: 時間単価 13,340円
投資収益10億円以上: 時間単価 13,019円
会社法監査と比較すると、投資事業有限責任組合監査の時間単価は高くなっている傾向があります。個人的な考えですが、これは投資事業有限責任組合の監査が1~2人の経験豊富な会計士が短時間で行う性質の監査であるからだと考えています。
状況調査を見ると、あくまでも上記の数字は平均値であり、これよりも少額で監査を行うこともあるかとは考えていますが、おそらく監査法人がファンド監査を行う場合には、任意組合などの法律上義務付けられていない監査がおおむね100万円、投資事業有限責任組合などの法定監査が120万円を超えるような水準になるのではないかと考えています。もちろん、休眠しているなどの特殊事情があるのであれば、これよりも安くなるでしょうが、どこの法人もそれほどに差異は出てこないはずです。
ファンド監査の問い合わせでは、たくさんの会計事務所に電話やメールで問い合わせ、少しでも監査報酬を安くしたいという強い思いを持たれている方が非常に多いのですが、正直なところ、時間を費消するだけで、それほど大きな差異はないのかなというのが、私の印象です。いずれにしても、投資事業有限責任組合や任意組合などのファンド監査を依頼することをお考えの際には、上記のデータなどもご参照いただければ幸いです。