監査法人大手、3者が経常減益 AI監査で費用増 (日経新聞)

監査法人大手、3者が経常減益 AI監査で費用増 日経新聞(9月13日)

4大監査法人の収益環境が厳しさを増している。13日出そろった2018年度の決算では、EY新日本監査法人など3者が前の年度比で経常減益だった。人工知能(AI)の活用に向けたシステム投資や人件費上昇などの負担が重くなっている。監査業務の複雑化に伴い、企業から受け取る監査報酬は増加。4者とも増収となったが、採算改善にはつながっていない。

EY新日本の経常利益は、9億円強と前年度比で6割減った。人材獲得に向けて会計士の報酬の引き上げを進め、AI監査の実用化に向けたシステム開発費もかさんだ。1割減益のあずさ監査法人も状況は似ている。

監査法人トーマツの経常利益は8億円弱と4割減少。IT(情報技術)分野のエンジニアやデータサイエンティストといった新たな専門人材の採用を増やしているためだ。サイバーセキュリティー対策強化などの費用は3割強増えた。永山晴子執行役は「守りの投資がかさんだ」と話す。

まずもって言えるのは、監査法人は上場企業ではないのだから、利益をあげる必要なんてそんなにないということなんでしょうね。システム投資をする金銭的余裕があれば、どんどんしなければいけないし、利益の従業員還元を真っ先に考えなければいけない。経常利益なんて、ある程度コントロールできる業種なはずなんで、まず考えなければいけないKPIは売上です。そういう意味では、4社とも増収ということで、それほど憂慮すべき状況ではないのでは?とも思います。

一方、PwCあらた監査法人は増益だった。負荷軽減に向けた人員採用などが一服した。監査大手は業務で求められる水準が質量とも高まっているため、案件を精査し、顧客数拡大にはやや慎重姿勢を取る。半面、案件ごとの監査報酬は増加傾向にある。

PwCは、ここ数年監査報酬以外での収益が増加している傾向がありますが、これは他の3社と比較すると性格を異にする傾向ですよね。注目すべき点だと思います。なお、大手監査法人の営業戦略としては、中小企業とのお付き合いよりも、大企業とのお付き合いを優先し、監査報酬のみならず、ビッククライアントにその他付随的な業務サービスを提供することで、売上の獲得を目指す戦略が目立っているような気がいたします。そんな状況の中で、比較的中規模な企業は、大手監査法人にいろいろお願いしたいことがあるにもかかわらず、なかなか相手にされない雰囲気を感じていると思いますが、こういった企業は中小監査法人や個人の会計士とのコミュニケーションを深めていくことが必要になってくると思います。