非上場企業の会計監査(ケースその3~Referred Work)
海外に親会社を持つ日本の子会社において、親会社の連結財務諸表上一定の重要性がある場合に、連結財務諸表作成用のパッケージ監査が求められることがあります。こういった監査を、Referred Work(リファード・ワーク)といいます。連結子会社の監査では、親会社の会計基準をベースに財務諸表の監査を行うため、IFRS・USGAAPでの業務が中心となります。海外親会社の連結対象となっている日本子会社の財務諸表の適正性について監査またはレビューを行い、 海外の監査法人とチームを組み、レポーティングを行います。
リファード・ワークは、国内で上場企業へ任意適用となっているIFRS、あるいはUSGAAPでの実務を行う機会が多くなるとともに、国際監査基準(ISA)や米国監査基準等、国際的な監査基準をベースに進めることになります。高度な監査人材でなくては対応できない領域の仕事であることは間違いないのですが、だからと言って、大手の監査法人でないとできないという仕事でもありません。個人事務所をかまえている公認会計士で、そういった国際的な監査業務に関与していた人はたくさんいますし、むしろ個人の会計士のほうが経験豊富と言えるでしょう。また、海外の監査法人とチームを組むと言っても、それ相応の英語力は必要となるものの、むしろメールや監査調書などを英語で作成するというライティングのスキルのほうが求められるため、実はハードなネゴシエーションが要求されるわけではありません。
相当の規模を占める連結子会社であれば、親会社の監査人と同じグループ法人によって、リファード・ワークを行うことが通常ですが、日本法人の規模が小さい場合、他の中小監査法人や個人の公認会計士に業務を委託することは実際にめずらしくありません。
実際に、私はドイツに本社を置く上場企業のリファード・ワークに関与していたことがありましたが、海外の連結子会社監査人宛にいっせいに送られたメールの宛先をみて、個人の会計士が半分以上であったことに驚いたことがありました。別に親会社のほうでも、規模が小さければ、誰が監査をしても気にしないんだなと痛感しました。このようなことを鑑みると、必ずしも同じグループの監査法人にリファード・ワークを依頼する必然性はそれほどないとも言えるでしょう。
子会社の財務経理をマネージングしている責任者であったら、こういったコストをコントロールしていくことも考えて、リファードワークの担当を誰にするのか考えたいものです。
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