令和元年 公認会計士試験問題の感想(企業法)
問題を見るのも意外と大変なので、いつまで続くかわかりませんが、監査論に続いて、企業法の問題についてコメントしたいと思います。
令和元年公認会計士試験論文式試験の試験問題 及び答案用紙について(企業法)
まず、感想としては…
どっちの問題も難しい…私自身も、すごく勉強になりました(笑)。
ただ、どちらかと言うと第一問のほうが難しかったような気がします。なぜかというと、そんな大事な資産を勝手に売ってしまうような会社の社長は、たぶん世の中にはそんなにいないから(笑)。
おそらく、私自身、独断で甲会社の所有する土地(会社の総資産額の 5 %に相当する資産)を,時価を大幅に下回る価格で、愛人とか妻の個人会社に売却する契約を勝手に締結するような社長とお会いすることは、たぶん死ぬまでないでしょう(笑)。ただ、この第一問 問題1には、利益相反取引であったり、任務懈怠があった場合の取締役の無過失責任など、重要な論点がちりばめられている。その上で、こういったレアケースに対して、どういった法的構成をしたうえで、取締役の責任を追及すべきかを考えなくてはならない。そういった意味で、私はすごく良い問題だと思いました。第一問 問題2は、さらに難しいような気がします。なぜならば、こんなワンマン社長が非常勤取締役に降格するようなことは、まずないから(笑)。普通、解任でしょう(さらに笑)。とはいえ、会社と委任関係にある取締役の報酬を減額するということは、この世の中よくあることであり、会社側が一方的に報酬額を変更することはできず,取締役が同意しない限り,取締役の報酬額は減額できないということは知っている必要がある。そういった意味で、こんなことはおそらく生きている限りなかなか遭遇することはないものの、やはりどういった法的構成をすべきかということを考える上で良い問題なのかなと思います。こういった問題で、最終的な結論を導き出せる人はよい会計士になるでしょうね。
第二問は、実際、実務の上でもよくあるケースです。非常に勉強になりました。こういった簡易株式交換の話や、帳簿閲覧権の拒否事由といった話は、それほど頻繁にはないものの、よくある話です。出題は実務家のような気がします。
私が、受験生だったころは、もっと基本的な内容のことを問う問題が論文式試験では出題されていたような気がします。しかし、実務では、会社法の条文からどういうような結論になりそうかということを推定するようなことは、会計士であればよく遭遇します。もちろん、最終的な判断を弁護士にゆだねることになるのですが、会計士にはその弁護士が下した判断を咀嚼して、その上でどういうようなアクションをとるのかを、実務では求められるのです。そういった意味で、2つの問題とも、具体的にどのような法的構成をもって、問題を解決するのかということをテーマにしており、非常に良い問題であったように思いました。