IFRSにおけるリース会計基準
私がシンガポールで働いていたときは、すべての企業(非上場企業も含む)にSFRS(シンガポール会計基準)を採用することが求められていたものの、実質この会計基準はIFRSと等しいものであったため、ほぼ全企業がIFRSを採用しているものとみなすことができました。
ですから、オペレーティングリースのリース資産・リース負債をオンバランス化するというルールは、非上場企業にも適用されることになり、その衝撃度は日本を上回るものであったように思います。適用前年の2015年~2017年くらいは、どこのシンガポールの監査法人も、いろいろとセミナーを開催して、雰囲気をあおって(?)いました。
日本に帰国しても、やはり監査法人があおっている雰囲気は感じるのですが、まあ何だかんだ言って、どこのIFRS適用上場日本企業もうまく対応しているのかなと思っています。ファイナンス・リースで、元々リース資産やリース負債をオンバランス化するという考え方は慣れているはずなので、不動産賃貸に関連するビジネスを営んでいなければ、実務への影響度はそれほどではないのかなと思います。とはいえ、日本で、IFRSを適用しているのは、せいぜい200社であり、どの会社もエリート企業といっても差し支えないので、他のIFRS適用予備軍にとっては、もしかしたら大変な作業になるのかもしれません。
しかし、実務編への影響度はそれほどではないにしても、バランスシートにかかるKPIをどのように算出するのかについては、非常に大きな混乱をもたらしたと思います。例えば、有利子負債比率などを求める際、一般的に、リース債務は有利子負債として認識されることになるので、IFRSを適用すると、有利子負債の金額は増えて、D/Eレシオなども上昇します。「J-GAAPでは、D/Eレシオは0.3だったけれども、IFRSでは0.4まで上昇する」なんて事例が、あたりまえのように出てきて、正直何を尺度とすべきなのかよくわからなくなります。本来であるならば、日本基準であろうと、IFRSであろうと、財務健全性が変わるわけがないのですが、比較可能性が著しく阻害される結果になっています。
将来的に、どのように扱われるのかはわかりませんが、全世界の企業がIFRSを適用することになる以上、J-GAAPで算出したROAや有利子負債比率など、将来的には何の意味も持たなくなるような気がしています。IFRSベースの財務諸表を公表するというのも大事ですが、IFRSベースの財務指標を出していくということも、比較可能性を担保するという観点からは、とても重要になってくるでしょう。
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