シェアオフィスビジネスの将来性

興味深いニュースだったので、少し触れたいと思います。

シェアオフィス「We Work」を運営するWe Companyが、アメリカで上場するそうですが、あんまり芳しい噂がないようで。いくつかニュースをピックアップすると

米ウィーワーク、9月にも上場 数十億ドル調達か ウォール紙報道

ウィーワークのIPO目論見書は「難読化の傑作」-アナリストが警告

ウィーワークのIPO目論見書に懸念:トライトンCEO

以下、記事から抜粋した内容を記載すると、2019年のIPOとしてはウーバー・テクノロジーズに次ぐ可能性があるWe WorkのIPOですが、トライトン・リサーチのCEOによると、最終損失が16億ドル(1700億円)の会社が、35億ドル(3700億円)を調達するのに、明確な理由が示されていないとか、数年後の見通しについては、退会者の見込が反映されていないようで、少し堅い数値ではないのではとのこと。いずれにしても、巨額の数値を得るために、数字を見せている部分があるのではとのコメント。

ちなみに、Prospectus(目論見書)は、こちら

日本とシンガポールのWe Workのオフィスしか見たことはないので、アメリカでどういうふうに運営しているのかはわかりませんが、オフィススペースはとても綺麗で、サーブしているドリンクもヒューガルデンなどのビールなどもあり、スナックなどもキャッシュレスアプリで購入可能、卓球台やパターゴルフマットなども完備されていて、とってもスタイリッシュで魅力的なオフィスです。

しかし、2018年12月期の損益計算書を見ると(単位:千ドル)

売上高 1,821,751
営業費用: 3,512,750
(内訳)
賃貸費用:1,521,129   
他の営業費用:106,788  
開業関連費用:357,831
販売・広告宣伝費:378,729
営業開拓費用:477,273
一般管理費(株式報酬費用含む):357,486
減価償却費:313,514

営業損失:1,690,999

だそうです。私は、このプロスぺくタスを全て見るというチャレンジングなことをする時間はないので、詳細な言及までは避けますが、感想としては、「ここまで、儲かっていないのか…」ということ。おそらく、キャッシュレス事業を営む会社もこんなものだとは思うのですが、単純に考えて500万円で借りたオフィスを600万円で転貸し、しかもその売上を集めるのに500~600万円(減価償却含む)もコストをかけているのか…ということ(上記の丸い数字は、かなりざっくりです)。

ソフトバンクグループのファンドがすでに出資しているようですが、トライトン・リサーチのレット・ウォレスCEOからは、smart guys(抜け目のない企業と訳されていますが、バカな奴らじゃないくらいが私にはスッキリします)と言われています。IPOで高値をつけた株式をどうするのかは知りませんが、長期的に保有することは考えていないような気がします。

ウーバーにしても、We Workにしても、最初のアイデアは素晴らしく、私自身もこういったビジネスモデルの慧眼ぶりには真似できないものを感じるのですが、模倣されやすいビジネスでもあるのかなと思いました。不動産を持っている会社は、このようなビジネスを絶対に真似したがるでしょうし、そうなるとマーケットも飽和状態になるかもしれません。私も応募できるなら、1株応募(一般個人投資家には1株が関の山でしょう)して当選したらすぐに売りぬいてやりたいとは思いますが、おそろしくて長期的には保有したいとは思いませんね。

しかし、まったく儲からないのだけど、資金をおもいっきり調達して、形だけ見せて素敵なビジネスに見せるということが、最近はよく見られるようになってきた気もします。IPO銘柄は、世界を問わず魅力的ですが、事業の将来性が株価の行く末を大きく左右する一番の要素だと思っているので、Prospectusにはそういった部分を盛り込まないと、不満に思う投資家は多いでしょうね。

弊所は、Prosepetusの和訳も承っております。詳細は、こちら