令和元年 公認会計士試験問題の感想(監査論)
私が公認会計士2次試験に合格したのは、20年近くも前ですが、いろいろ問題の趣向も変わってきたようです。試験問題を通して、少し思ったこと、気づいたことなどをコメントしてきたいと思います。まずは、監査論です。
令和元年公認会計士試験論文式試験の試験問題 及び答案用紙について(監査論)
ちなみに、私が受験生のときに一番の苦手科目だったのは、監査論でした。もう、当時のTACの監査論のM先生が、「この定義は覚えてください」と真顔で話すその姿に、吐きそうになるほどの嫌悪感を覚えたものです(別に、M先生に嫌悪感を覚えたのではなく、定義をひたすら覚えるというその作業が合格への近道であるということに嫌悪感を覚えたのです)。あたりまえですが、監査理論は独創的なものでもなんでもありません。論文科目なので、答えは無限にあるようにも思えますが、答えはひとつです。なんて、監査論が苦手であった私が語るのはおこがましいですが、そこをはき違えると大変なことになります。
そういった意味で、第一問の問題は典型的な問題であり、私が受験生であったときと何ら変わらないような問題が出ています。定義を暗記することが得意な受験生は落とさないでしょうね。ただ、これは感覚的なコメントになるのですが、こういった問題を暗記一辺倒だけで解くような受験生は、会計士になったときにすごく苦労するような気がします。基本中の基本でもあり、私も解答を見れば、「うん、その通りだね」となるのですが、暗記だけで解いていると、臨機応変に対応できない。要するに、被監査会社が会計士を何とかして欺いてやろうと思ったときに、すぐ騙されてしまう。というような意味で、答案を採点する試験委員の先生には、暗記一辺倒に頼らない採点をしてほしいなとは思います(偉そうな言い方ですが)。
逆に、第二問は事例問題ですね。私の時代には、こういう出題は、まずあり得ませんでした。第一問のような典型的な問題のオンパレードだったのです。非常に良い傾向だと思います。監査実務経験がない受験生にこういった問題を出すのは、ちょっと酷なような気がしますが、被監査会社に安易に騙されない懐疑心といったものは、確実に身につきます。こういった問題が得意な人は、良い監査人になるでしょうね。コンサルタントとしても、能力を発揮できるのではないでしょうか。
最後にひとこと。私は、定義を覚えることに、受験生時代は嫌気を覚えていましたが、ある司法試験の予備校講師が、「定義をおろそかにする奴は、一生司法試験に合格しない」と本で書いているのを見て、一念発起し、嫌いな定義を覚える苦行に耐えていきました。その結果、わかったことは。と言うか、実務に出てわかったことは、こういった定義を正確にクライアントの前で話す機会は、ことのほか多く、とても役立ったということでした。受験生の中にも、監査論の定義の暗記が大嫌いな人もいるでしょうが、「財務諸表監査は、不正による重要な虚偽の表示がないことについて,必ずしも絶対的な保証が得られるわけではない」ことについて説明する場合、自分のアバウトな(もしくは独創的な)言葉で説明するよりも、暗記して覚えたガイドラインに書いてあるような言葉で説明したほうが絶対良いのです。定義を覚えることは、実務に出たときに必ず役に立つと思います。頑張りましょう(笑)。