財務諸表英訳のポイント(1)

財務諸表の英訳の難しさは、細かい表現にあります。単数形や複数形、また微妙な言い回しなどで、会計のプロが英訳しているのか、単なる翻訳者が仕事しているだけなのか、すぐにわかります。

以下、何回かに分けて、勘定科目の英訳などについて、ポイントとなる表現(特に単数形・複数形)についてまとめていきます。

現金及び現金同等物
Cash and cash equivalents

Cashは、不加算名詞であるため、複数形で表現しないことは知っている人は多いと思います。しかし、cash equivalents(現金同等物)は複数形になることがほとんどです。
現金同等物とは、容易に換金でき、価格の変動によるリスクの少ない短期投資をいい、 満期が3か月以内の定期預金、譲渡性預金(CD)・コマーシャルペーパー(CP)・公社債投信などがこれにあたりますが、定期預金などは口座ごとに数えることができるので、可算名詞ということで複数形になるようです。では、cash equivalentになるような預金がひとつしかない場合には、単数形になるのかと言えば、実際、sをつけずに単数形でもOKだということになります。

定期預金
Time Deposits(米)、Fixed Deposits(英)

定期預金は、アメリカ英語とイギリス英語で表現が異なるようです。個人的には、Fixed depositsのほうが好きな表現です。財務諸表で表現する際には、複数形のほうが多いと思われます。これは、やはり定期預金として持っている口座が、ひとつなのか複数なのかによって表現は変わるのではないかと思われます。しかし、年度によって、ひとつしか定期預金口座を持っていない場合には、単数形で表記し、複数持っている場合は、複数形で表記するようであると、毎年財務諸表の表記も変えなくてはいけないので、一般的に複数形で表記していることが多いようです。でも、単数形だからと言って、間違いではないと思います。

売掛金
→Accounts Receivable

売掛金に関しては、Accountにsがつき、複数形での表記になると理解しましょう。なぜならば、通常の会社である場合、売掛金の相手先が1件のみということはあり得ないためです。したがって、複数の相手先との取引によって生じた債権は、ほぼ複数形表記になります。

棚卸資産
→Inventories

売掛金と同様の理由で、ほぼ複数形になります。棚卸資産が1種類でひとつしかないって、通常の会社であれば、ありえないですよね。

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