GAAP差異(ソフトウェア)

(前の記事)GAAP差異(耐用年数を確定できない無形資産)

日本基準/IFRS/USGAAPでは、ソフトウェア製作費にかかる取扱いについて差異があります。

2.ソフトウェア製作費

日本基準においては、研究開発費等に係る会計基準四において、以下のようにソフトウェア製作費の会計処理を定めています。

  1. 受注制作のソフトウェアに係る会計処理
    →請負工事の会計処理に準じて処理
  2. 市場販売目的のソフトウェアに係る会計処理
    →研究開発費該当部分をのぞき資産計上
  3. 自社利用のソフトウェアに係る会計処理
    →(外部へ業務処理等のサービスを提供する契約が締結されている場合)
     収益獲得が確実であると認められるのであれば資産計上
    →(完成品を購入した場合/収益獲得・費用削減が確実である場合)
     ソフトウェアの取得に要した費用を資産計上

USGAAPにおいては、まず内部開発無形資産のコストについて、耐用年数が確定できないような曖昧なものは、費用計上するということで、以下のような規定が定められています。

(ASC 350.30.25.3)
Costs of internally developing, maintaining, or restoring intangible assets that are not specifically identifiable, that have indeterminate lives, or that are inherent in a continuing business or nonprofit activity and related to an entity as a whole, shall be recognized as an expense when incurred.
(意訳) 識別ができず、耐用年数が確定していない、もしくは全体として企業活動に関連する事業固有の内部開発コストは発生時に費用として認識するものとする。

また、ASC350.40 Internal Use Softwareの中で、下記のように細かい規定が設けられています(和訳省略)。

25.1
Internal and external costs incurred during the preliminary project stage shall be expensed as they are incurred.

25-2 Internal and external costs incurred to develop internal-use computer software during the application development stage shall be capitalized.
25-3~25-5 (省略)トレーニングコストやコンバージョンコストに係る規定あり

25-6 Internal and external training costs and maintenance costs during the postimplementation-operation stage shall be expensed as incurred.

そして、下記のような規定が例外規定として、ASC985のソフトウェアのCodificationの中で設けられています。

(ASC 985.20.25.3)
Costs of producing product masters incurred subsequent to establishing technological feasibility shall be capitalized.
(意訳)技術の実行可能性が確立したあとに発生した製品マスターの製造コストは資産計上するものとする。

米国基準の場合、ASC985にソフトウェアの規定が別途設けられているのが特徴です。

IFRSの研究開発費の処理については、以前の記事に記載していますが、研究局面と開発局面に分類したうえで、前者の支出は原則費用処理、後者の支出は特定の要件を満たした場合に資産計上するルールになっています。

(参考)資産計上される研究開発費(IFRS)

以上のように、日本基準では研究開発費等に係る会計基準の中で、米国基準ではASC350と985の中で、ソフトウェアの会計処理に関する言及がありますが、IFRSでは特に設けられていません。また、IFRSでは広告宣伝および販促活動にかかる支出の規定が、IAS38.69などで設けられているなどの特徴がありますが、大きな論点は耐用年数が確定できない無形資産の規定と、ソフトウェアの規定になるでしょう。

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