棚差の金額をごまかした!(上場企業でもこんなことはある)
特別調査委員会の調査報告書受領に関するお知らせ (大豊工業/東証一部)
最近、公表された調査報告書で、非常に興味深い不正会計の案件があったのでコメント。
TCA(大豊工業海外子会社) の経理マネージャーであり、経理処理全般を担当している A 氏は、TCA の決算数値を取りまとめる際に、損益の実績値と収支計画に基づく計画値との間に生じた差異のうち、合理的な理由を見い出せなかった部分につき、TCA の棚卸の結果が正しくないと決めつけ、棚卸の結果を調整して財務情報上の棚卸資産額とすることにによって、合理的な理由の見つからない差異を解消していたとのこと。その結果、実地棚卸の結果に基づく棚卸資産額と財務情報上の棚卸資産額との間に大きな乖離が生じた。ちなみに、差異金額は450~500万ドル(5億円前後)であったそう。
A氏は、本件調整行為の目的について、専ら計画値と実績値の説明ができない差異を回避することにあり、利益ねん出並びに TCA の固定資産の減損、大豊工業における TCA 株式の評価損及び TCA への貸付金の貸倒引当金の計上の回避など、他の目的はなかったと述べたらしい。TCA は、本件調整行為を施した後の数値でも収支計画どおりの売上や利益率を実現できていないことから、A 氏が本件調整行為を行った目的が収支計画を実現することにあったとは認められない。
とはありますが、こういうようなスタッフをアメリカに経理マネージャーとして派遣しなければいけないあたり、日本は本当に人材不足なんでしょう。しかし、本件調整行為が収支計画実現することにあったとは認められないかもしれませんが、棚卸資産の差異原因をつめられないから、誤魔化したという意味では、立派な任務懈怠になるでしょう。A氏はクビになったかどうかはわかりませんが、こういったスタッフを重宝してしまうあたりが日本の会社の病理とも言えるのかもしれません。
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