会計監査人の交代

先日、帝国データバンクから「上場企業の監査法人移動調査(2021年上半期)」が発表されていました。会計監査人交代は、年々多くなっています。また、公認会計士・監査審査会から公表されている「令和3年版モニタリングレポート」によると、かなり多くの会社が「監査対応と監査費用の相当性」というコストの観点からの交代が増加していることが記載されています(94ページ参照)。

交代先としては、やはり大手から準大手、中小への交代が多くなっており、規模の小さい監査事務所への交代のうち約7割は監査報酬が減少しているとのことでした。月間監査役の記事によると、大手は平均74百万円、中央値37百万円に対して、中小では平均27百万円、中央値22百万円となっているようです。近年、大手監査法人では、誰もが知っているような超大型上場企業の業務にフォーカスする傾向があり、それにあわせて監査報酬の増額をはかっています。中小規模の上場企業もその割を食っている状況に陥っているといえるのですが、それを忌避して中小監査法人に交代しているということなのでしょう。今や、会計監査人の交代はめずらしいことではなくなっています。

この傾向は、非上場の子会社監査についてもあてはまります。特に、外国に親会社がある日本の連結子会社の監査などは、大手監査法人が求める水準の監査費用を負担することが難しいことが少なくありません。2015年以後は、大手監査法人が増額を求める傾向が強くなっていることもあり、このような連結子会社についても中小監査法人や、私どものような会計事務所に子会社監査を依頼するケースが増えています。

そして、そのような連結子会社様の多くが、大手法人の提供するサービスに満足していないことも理由にあるでしょう。大手法人は、会計士の新人教育を担う立場にもあり、連結子会社の監査のような小規模な監査チームでは、1,2年目の新人ばかりということがよくあります。この事実に直面してしまうと、相対的にコストも低く、豊富な経験を持っている個人の会計士に依頼をしたほうがよいという結論にもなります。

また、交代にかかる手間を考えると、継続して依頼したほうがよいと考えていた会社様も多かったのですが、小規模な会社様の場合は、実際それほどの手間はかかりません。というようなことから、クライアント様の間でも監査人を交代するということに消極的ではなくなってきており、今後は会社のステージ、規模、求めるスキルなどを勘案して適切な監査人を選ぶ傾向が高まっていくことでしょう。

(HP)お問い合わせは、日本橋国際会計事務所まで