GAAP差異(有形固定資産-測定)
有形固定資産の取得原価測定/減価償却については、IFRSでは再評価モデルが認められていることや、構成原価アプローチによる減価償却が認められているなど、特徴的な規定があります。これに対して、日本基準やUSGAAPにはこういった規定が設けられていません。
1.再評価モデル(認識後の測定)
IFRSでは、原価モデルと再評価モデルのいずれかを会計方針として選択し、有形固定資産の種類ごとに適用しなければならない旨が定められています(IAS16.29)。再評価モデル(Revaluation model)とは、有形固定資産を、再評価を実施した日における公正価値から、その後の減価償却累計額およびその後の減損損失累計額を控除した評価額で計上する方法をいいます(IAS16.31)。ただし、再評価は、有形固定資産の公正価値が信頼性をもって測定でき、その評価も定期的に行うことが求められています。
日本の会社が、土地以外の固定資産で再評価モデルを使うことはあまり考えられないでしょうか。なお、日本基準やUSGAAPには、再評価モデルの規定はありません(投資不動産においても同様)。
2.構成要素アプローチ(Component Approach)
構成要素アプローチとは、有形固定資産を、その重要な部分を占める構成要素別に識別することをいいます。この説明は、エンジンと機体で実用的な耐用年数が異なる飛行機の事例を用いて語られることが非常に多いです。機体はメンテナンスをすれば20年~30年の耐用年数がありますが、エンジンなどの起動装置は相対的に耐用年数が短くなるため、固定資産を1機の「飛行機」として識別するよりも、「機体」や「エンジン」と個別に扱ったほうが合理的であるという話です。
IFRSは、こういった測定を実態に即して実施しようと行う側面があります。そのため、この構成要素アプローチがマストの規定になっています(IAS16.43)。日本基準やUSGAAPには、構成要素アプローチの概念はありません。
私がさまざまな業種の会社の財務会計業務にたずさわった経験からすると、やはり飛行機のような物理的なスケールの大きい動産を持つ運輸会社(航空・鉄道)、金額的規模の大きい機械・工場設備を持つメーカーなどで、構成要素アプローチの適用を検討している場面に遭遇したことがあります。
しかし、そうでなければほぼ無視してもよいのではないでしょうか。とはいえ、こういった有形固定資産の金額的規模が大きい場合や、監査人が検討を要請しる場合には、説明できるように準備をしたほうがよいのでしょう。
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