GAAP差異(減価償却の見直し)

(前の記事)GAAP Dif(有形固定資産-減価償却)

前回は、減価償却ついて言及しました。今回は、耐用年数、残存価額、減価償却の方法が、それぞれの会計基準でどのように扱われるかについてとりあげます。

4.減価償却の見直し

まず、日本基準、IFRS、米国基準それぞれについて、耐用年数や減価償却方法の変更は会計上の見積りの変更として扱われて、会計方針の変更には該当しないのは共通です。

ただし、IFRSでは、資産の残存価額、耐用年数、減価償却方法は少なくとも各事業年度末には再検討を行い、予測が以前の見積りと異なる場合には、実態を反映するように変更しなければならないとされている点が、日本基準やUSGAAPとは異なります。

アメリカでも、日本ほど細かいものではないですが、固定資産について耐用年数が税法で定められています。なお、アメリカの固定資産の耐用年数は、政策的な意味合いもあり、日本よりも短めに設定されていることが多いでしょうか。アメリカの減価償却でよく耳にする150%定率法とか、200%定率法などはその典型です。これに対して、日本の税法ベースの耐用年数は、かなり長く設定されています。一度購入したものは、もったいないから長く大事に使うという文化なのでしょうか。

いずれにしても、日本では税法基準の耐用年数は長いため、税法ベースで行う減価償却はおのずから保守的な会計処理になってしまいますが、アメリカでは税法ベースになると、比較的短期間で資産の償却が終わってしまいます。というような事情もあり、日本では財務会計でも税法の耐用年数を踏襲する傾向があり、アメリカ本土の企業では相対的に経済的耐用年数を税法とは別に、予想される耐用年数を見積もって減価償却を行おうとする傾向があるように思います(私の個人的主観ですが)。

日本に拠点を置く企業がUSGAAPを適用しようとする場合、こういった耐用年数の検討については、以上のような事情(比較的、税法ベースでは長い耐用年数が設定されているということ)から、それほど神経質になる必要もないかと思います。少なくとも、米国親会社がやっていることと同じことをする必要はないのではと思います。ただし、日本に拠点を置く企業がIFRSを適用する場合には、残存価額、耐用年数、減価償却について(理論上は)毎年再検討を行わなければなりません。日本基準やUSGAAPは、やはりそれぞれの国の税法の規定をふまえたルールであるのに対し、IFRSは万国共通の会計ルールであるがゆえに、このような違いがあるのでしょう。

そのほかにも、固定資産の交換による取得などをする場合に、それぞれの会計基準において取扱いが異なる場合があります。

いずれにしても、日本基準からIFRS/USGAAPへのコンバージョンを行う場合には、このような背景を理解しておく必要もあるため、専門家への依頼を検討すべきかと思われます。

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