外国法人の会社機関設計(その4)~支店の設置

(なお、当該記事は、英語版ブログでの英訳を後日配信する予定です)。

外国法人の機関設計(その3)~駐在員事務所が採用されない理由

前回の記事で、駐在員事務所は収益事業を行わないことが前提である旨についてはコメントしましたが、いよいよ収益事業を行う場合には、法人の設立か、支店の設置のいずれかを検討しなければなりません。

(参考)
外国法人の会社機関設計(その1)
外国法人の会社機関設計(その2)

ここでは、支店を設置する場合について解説していきます。支店の設置は、外国企業が日本において営業活動の拠点を設置するための最も簡便な方法です。具体的には、以下の要件を満たす必要があります。

①日本における代表者を定めること、そのうち1人以上は日本に住所を有する者であること
②日本における代表者の住所地又はその他の場所に支店(Japanese branch)を設けること
③日本支店を管轄する法務局に登記すること(法務局では、事務所の賃貸契約書等は確認しない)

支店には、独立した法人格は認められず、外国会社の一部分として取扱われます。したがって、支店の活動によって生じた債権債務は、最終的には外国企業に直接帰属することとなります。しかし、支店を設置する場合であっても、法人税(国税)を納付する必要があります。したがって、タックス・メリットの観点からは、子会社を設立するか、支店を設置するかどうかは、あまり差異がないといえるでしょう。さらに、日本で法人税が課税されるのは日本支店の所得のみにもかかわらず、外国法人全体の貸借対照表、損益計算書、株主資本等変動計算書の添付が必要とされます。外資系企業の経理担当者であれば、本社の財務諸表を入手することの難しさというのはよくわかるはずです。そのようなことを考えて、支店の設置についても考えるべきでしょう。

また、支店を設置した場合であっても、地方税の申告義務はあります。外国本店の資本金金額が1億円超である場合には、外形標準課税の納付義務が生じます。多額の資本金を有する外国企業が支店を設置した場合には、かなり注意が必要です。ということに鑑みると、支店の設置は、資本金規模がかなり小さめの中小企業にとっては良い選択になるかもしれませんが、大企業にとってはあまり良い選択肢にはならないといえるでしょう。

以上を踏まえると、やはり日本への事業進出を考えた場合、法人の設立といった手続が一般的であるともいえるでしょう。いずれにしても、駐在員事務所の設置は、事業活動の制約が多いこと、支店の設置は思わぬ税金負担を強いられる可能性が高いことを考慮することが大切です。

(リンク)
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